冬夏古典文庫 〇〇三
カラマーゾフの兄弟
フョードル・ドストエフスキー 作/保科 隆明 訳
『カラマーゾフの兄弟』は、父親殺しの謎を追う推理小説であり、神はいるのかを真正面から問う思想の書でもあります。世界文学の頂点と呼ばれながら、途中で挫折した人がこれほど多い本もめずらしい。だからこの版では、最後のページまでたどり着けることを何より大切にしました。
- 原作
- Братья Карамазовы(一八七九―八〇年)
- 底本
- ロシア語原典(ナウカ社版全集)
- 構成
- 分冊四巻/合本
- 収録
- 訳者まえがき、凡例、おもな登場人物と愛称の早見表
- 形式
- EPUB(縦書き)
- 公開
- 二〇二六年十月二十九日
- 価格
- 無料

ダウンロード
一冊にまとめた合本と、四つに分けた分冊があります。中身は同じなので、読みやすいほうを選んでください。読み込みが重くなりやすい端末では、分冊がおすすめです。
分冊
-
第一巻をダウンロード 295KB第一巻
第一部 第一編〜第三編(「著者より」を含む)
-
第二巻をダウンロード 289KB第二巻
第二部 第四編〜第六編
-
第三巻をダウンロード 314KB第三巻
第三部 第七編〜第九編
-
第四巻をダウンロード 429KB第四巻
第四部 第十編〜第十二編、エピローグ
冒頭を読む
第一部 第一編 ある家族の歴史
一 フョードル・カラマーゾフ
アリョーシャ・カラマーゾフは、この郡の地主フョードル・カラマーゾフの三男だった。
父フョードルの名は、当時このあたりでずいぶん知られていた。今でもときどき人の口にのぼる。ちょうど十三年前、悲惨で謎めいた死に方をしたからだ。その件については、いずれしかるべきところで話す。
ここではこの「地主」について――町ではそう呼ばれていたが、本人は生涯、自分の領地にはほとんど住まなかった――ひとつだけ言っておく。彼は奇妙な、しかし案外よく見かけるタイプの人間だった。ろくでなしで女にだらしないばかりか、まるで筋の通らない男。それでいて、自分の財産のことだけは抜け目なく立ちまわれる。そういう種類の男である。いや、うまくやれるのは、どうやらそれだけだったらしい。
たとえばフョードルは、ほとんど無一文から出発した。地主といってもごく小さな地主で、よその家の食卓にもぐりこんではただ飯にありつき、居候になれる先をうかがっているような男だった。ところが死んだときには、現金だけで十万ルーブルも残していたのだ。それでいて生涯、この郡でいちばん筋の通らない変わり者でありつづけた。
くり返すが、これは愚かさとは違う。こういう変わり者は、たいていかなり頭がよく、ずる賢い。そうではなく、筋が通らないのだ。それも、どこかロシア人特有の、独特の筋の通らなさなのである。
フョードルは二度結婚し、三人の息子がいた。長男のミーチャは最初の妻の子で、イワンとアリョーシャは二番目の妻の子である。
『カラマーゾフの兄弟』の冒頭です。続きはEPUBでお読みください。ダウンロードへ



